マズローの「人間性の心理学」

マズローの「人間性の心理学」

 

人材育成を考えるうえで、「人間がもつ本質的な欲求」を考察することは重要である。

なぜなら、人間が何によって動機付けされるかの根源を知らなければ、状況に応じて応用できないからだ。

医師は、専門職としての地位を古くより確立している。

自然発生的に、自分自身をうまく動機付け社会貢献できる者もいれば、うまくいかず、路頭に迷う者もいる。動機付けの理論を深く理解することで、適切に進路をサポートできるかもしれない。

 

そのなかで、マズローという偉大な心理学者が考察した欲求についての著作にあたることは必然だったのだろう。

 

本書の冒頭にマズローは述べている。

有意義な人生の定義は唯一つ「本質的に欠乏しているものがあり、それを求めて努力すること」(序 項29)

 

日常生活における平均的な願望は、それ自体が目的なのではなくむしろ目的に至る手段なのである。(第3章 項35)深く掘り下げて分析すると必ず、我々が到達できない背後にある目的とか欲求に究極的に行きつくことができる。(第3章 項35)

 

動機付けの研究とは、部分的には、究極的な人間の目標・願望・欲求の研究でなければならないのである。(第3章 項35)

 

本来的には、すべての人間はこの背後にある目的とか欲求を持っているはずだ。

これが、最終的には自己実現の欲求に至るのだろう。

 

マズローは以下のように、順に充足している欲求を述べている。

・生理的欲求

・安全欲求

・愛の欲求

所属する集団や家族においての位置を切望しているのであり、この目標達成のために一所懸命、努力することになる。(第4章 項68)

・承認の欲求

我々の社会では、すべての人々が安定したしっかりした根拠を持つ自己に対する高い評価、自己尊敬、あるいは自尊心、他者からの承認などに対する欲求・願望をもっている。(第4章 項70)

自己実現の欲求

人は、自分がなりうるものにならなければならない。人は、自分自身の本性に忠実でなければならない。(第4章 項72)

 

 つまり、プロフェッションとしての医師という存在を考えたとき、動機付けという心のベクトルの行く先は、「こういう医師になりたい」という自己実現の終着地点があるのだろう。その終着地点を、深く解明することで新たな知見が生まれるかもしれない。