共感の体現:医師の手当ての現象学的研究
, , , , . Embodying empathy: A phenomenological study of physician touch. Med Educ. 2020; 54: 400– 407. https://doi.org/10.1111/medu.14040
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1111/medu.14040
<コメント>
touchは一部、「手当て」と表現しました。他に、適切な訳があるかもしれません。
この論文は、非言語コミュニケーションにとって、重要な知見だと思います。
実際に患者さんに触れることの重要性・・・今回は医師のインタビューでしたが、患者さんの話も聞いてみたいですね。
※template analysisは初めてききました。
<要旨>
文脈
共感的な医師の行動は、改善された患者の転帰と関連している。共感を示す一つの方法として、手当てを含む非言語コミュニケーション(NVC: non‐verbal communication)の使用がある。これまでのところ、NVC、特に手当てに関する研究は医学の分野では比較的限られており、それが感情的で共感的なメッセージを伝える上で中心的な役割を果たしているのは驚くべきことだ。NVCに関するカリキュラム開発に役立つように、本研究では、手当てによるコミュニケーションの医師の経験を解明することを目的とした。
方法
解釈的現象学的研究を行った。新卒の医師と経験豊富な医師を含む、異なる専門分野の医師15名(女性7名、男性8名)が、それぞれの臨床現場から得た手当ての具体的な事例を詳細に説明した。インタビューは、参加者に文脈、触れた患者との関係、触れたときの身体的な経験などの詳細を正確に思い出すように促した。インタビュー(45~100分)はテンプレート分析で分析され、その後、弁証法的な質問のプロセスを経て、データと研究者の個人的な考察の間を行ったり来たりしながら、現象学的な先行研究に基づいて最終的な解釈をまとめた。
結果
参加者は、手当ての体験について、「接触を選択して誘い入れる」と「共感を表現する」という2つの次元を説明した。接触は個人的なものであり、壊れやすいプロセスだった。参加者は、接触が適切かどうかを判断するために、患者の非言語的な合図を解釈した。参加者は顔の表情や現在のボディランゲージを解釈して、患者の体験を意味づけした。参加者は感情を共有し、共感と存在感を示すために接触を使用した。参加者の接触の経験から、手当ては体現された共感的コミュニケーションの一形態であると考えられた。
結論
触れることは人と人とのつながりを確立することができる強力なNVCの一形態である。共感の現象学的な説明は、その具現化された主観的相互作用を強調し、医学教育における「手当て」への教育学的アプローチを理論的に豊かにし、共感への理解を深められ得る。