マズローの基本的欲求の階層図への原点からの新解釈~論文紹介~
論文の紹介です。
今回は、Maslowの欲求階層理論の紹介です。
心理学的にとても重要な理論の一つで、必ず理解しておかなければならないものだと思います。
著者の廣瀬先生は、聖路加看護大学の心理学の教授のようです。
経歴
- 2011年- 現在聖路加国際大学(教授)
- 2004年- 2011年聖路加看護大学(准教授(助教授))
- 2001年- 2004年新潟医療福祉大学 専任講師
- 1994年- 2001年 東北福祉大学 助手
- 1993年- 1994年厚生省児童家庭局
- 1989年04月- 1993年03月社会福祉法人(知的障害児・者)
廣瀨 清人(看護心理学) | 聖路加国際大学 業績データベース
この論文の中で、著者はいわゆる有名な「基本的欲求の階層図」は図としてはMaslowの原著には記されてないとあります。Maslow自身が述べているように彼の著作は膨大であるため、それをうまく紐解いたゴーブルが『マズローの心理学』を書き、そこで初めて「基本的欲求の階層図」が描かれているとあります。
・・・本文より・・・
「基本的欲求の階層図は,基本的な生理的欲求から, より複雑な高次の心理的動機づけに至り,それらの高次の欲求は,より低次の欲求が満たされてはじめて重要性を持つ。ある階層の欲求が,少なくとも部分的に満足されて,はじめて,その次の階層の欲求が行動の動機づけとして意味を持つようになる。食料や安全の確保が困難な場合,それらの欲求を満たそうとする努力が,人の行動を支配して,より高次の動機は重要でなくなる。基本的欲求を容易に満足させられる場合にのみ,美的・知的欲求を満たすために,時間と努力を費やすことができる。したがって,食料,家屋や安全を確保することに人々が苦労している社会では,芸術や科学はさかんではない。もっとも高次の動機である自己実現欲求は,ほかのすべての欲求が満たされてはじめて満足できる状態になる」
18) 。
18) Smith, E. E, Nolen-Hoeksema, S, Fredrickson, B. L, Loftus, G. R.(2005).14 版ヒルガードの心理学.内田一成監訳.618-620.東京:ブレーン社.
しかし、この論文の著者はこのモデルを「・・・自己実現の目標リスト
が省略されていたし,また両者とも,基本的欲求満足の前提条件を,なぜか省略してしまった・・・」と指摘している。
そこで、生み出された新たな階層図が以下のものである。
・・・各階層の網掛けの意味は,「生理的欲求は 85%,安全の欲求は 70%,愛の欲求は 50%,自尊心の欲求は 40%,自己実現の欲求は 10%が充足されているのが普通の人
間ではないか」 9) というマズローの主張と対応したもので,図7では,その割合を各階層に網掛けで示した。 高次欲求論によると,自己実現の欲求を成長欲求とし
て,生理的欲求,安全と安心の欲求,所属と愛の欲求,承認の欲求を欠乏欲求として区別し,「成長欲求と欠乏欲求は質的相違があり,欠乏欲求が成長欲求の必要条件と
なる」 と述べていることから,図7においてそれらの区別を明示した。また,ゴーブルの階層図では「成長欲求はすべて同等の重要さを持つ」 という注記をしたが,この発言は重要と考えられるため,図7では右上に注記した。・・・と筆者は説明している。
この新たなモデルをもとに、看護分野における「患者の基本的欲求」を解釈するヒントとして、この階層図が有用ではないかと提言しているのである。
以下が、訳本としてよく読まれているようです。